高齢化に伴って、認知症患者も年々増えています。家への帰り道がわからなくなったり、食事をしたか思い出せなかったりと、記憶力や判断力に障害が起こる認知症。このまま高齢化が進めば、5~6年後には約250万人もが、この病気にかかると推測されています。ここでは、症状や検査、治療法などからどんな病気なのかを説明しましょう。
認知症は、記憶力や判断力に障害をきたし、次第にそれらの能力が低下して実行機能障害を起こした状態のことをいいます。なので、認知症というのは1つの病気を指しているのではありません。認知症の原因としては、脳や体のさまざまな病気が挙げられるでしょう。その原因によって、一次性認知症と二次性認知症に分けられます。前者は「アルツハイマー型認知症」や脳血管性認知症、後者は伝染性の病原体によるかんせん、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症などの代謝異常…というような色んな原因で発病します。ちなみにアルツハイマー型は30~60代と、比較的若い人に発症する傾向にあります。
認知症になると、どんな症状があらわれるのでしょうか。どの認知症患者にも共通して見られる症状には、記憶障害、実行機能障害、判断力の低下、失語などがあります。これを中核症状といいます。このほか、周辺症状といって妄想や幻覚、異食、不眠、徘徊などが見られる場合もあります。周辺症状は、介護のしかたや環境、周囲との関係などから起こるもので、認知症患者全員に見られるわけではありません。また、アルツハイマー型の場合、人格がガラッと変わることもあるため、注意しましょう。
中核症状としてあらわれる主な症状は、次のようになっています。
症状 |
例 |
記憶障害 |
物事を記憶することが苦手になり、特に新しいことを覚えにくくなる。 |
実行機能障害 |
今までできていた動作ができなくなる。計画を立てたり、手順を考えるのが難しくなる。 |
判断力の低下 |
自分が置かれている状況を判断し、筋道を立てて考えることができなくなる。 |
抽象思考の低下 |
抽象的なことが考えられなくなる。 |
見当識障害 |
今の年月日や時刻、自分がどこにいるのかなどがわからなくなる。 |
失語 |
言葉の意味がわからなくなり、言葉が出にくくなる。 |
失行 |
服の前後を間違えるなど、動作を組み合わせることができなくなる。 |
失認 |
家族など知っているはずの人を認知できなくなる。 |
周辺症状としてあらわれる主な症状は、次のようになっています。
症状 |
例 |
せん妄 |
意識が混乱した状態になる。 |
妄想・幻覚 |
「物をとられた」とか「家の中に誰かがいる」などと言う。 |
不潔行為 |
トイレ以外の場所やオムツを外して排泄する。排泄物をいじったり、食べたりする。 |
徘徊 |
どことなく歩きまわる |
異食 |
植木鉢の土や植物の葉など、食べ物以外のものを食べる。 |
抑うつ状態 |
何をするにも意欲がなくなったり、今まで興味のあったものに無関心になる。 |
こうげき的言動・行為 |
ちょっとしたことで、こうげき的になる。 |
焦燥 |
イライラして落ち着きがない。 |
迷子 |
外出して、家に帰る道がわからなくなる。 |
多動・興奮 |
急に興奮して騒ぎ出す。 |
不眠 |
夜眠れずに、昼間ウトウトする。 |
介護に対して抵抗 |
介護者に反抗的な態度をとり、介護されることを嫌がったりする。 |
認知症は、どのようにして診断されるのでしょうか。本人をはじめとする家族への問診、知能テスト、画像診断、血液検査などさまざまな検査結果から総合的に診断します。問診では、最初に家族から患者さんの状態を聞いておき、それをもとに本人から話を聞きます。家族はいつ頃からどんな症状が出始めたかなどをメモしておきましょう。本人の診察時には簡単な知能テストを行います。知能テストにはいろんな方法がありますが、一般的には「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」がよく知られています。これらの結果から認知症が疑われる場合、さらに詳しい検査をします。脳血流シンチグラフィ、CTやMRIなど画像検査を行い、脳の萎縮はないか、血流の異常はないかなどを確認して、認知症の種類や病状の進行度といったものをより詳しく調べていきます。こうして最終的に、治療法を決定します。
認知症の場合、その種類や症状によって治療法が異なります。認知症の治療には、薬物療法のほか、脳の機能を取り戻すためにいろんなリハビリをすることも大切です。
原因不明の「アルツハイマー型認知症」には、進行を抑える薬が使われます。一方、脳血管性認知症は原因となる高血圧や動脈硬化などの治療をすることで、多少の効果を見込めます。
原因となる病気の治療をすることで、症状は改善していきます。
夜間せん妄や徘徊などの過活動性症状、意欲低下や抑うつ状態などの低活動性症状には、向精神薬が使われることもあります。
音楽や絵画、料理、計算、旅行などで脳を活性化させると、症状の進行を遅らせることができます。